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EU離脱で窮地に立たされる英国の宇宙産業

100億ユーロ規模のプロジェクト、欧州版全地球測位システム(GPS)「ガリレオ」の最新段階の事業に関して、欧州連合(EU)が新たな契約条件を打ち出したため、英国の企業が実入りのいい契約から締め出される恐れに直面している。

100億ユーロ規模のプロジェクト、欧州版全地球測位システム(GPS)「ガリレオ」の最新段階の事業に関して、欧州連合(EU)が新たな契約条件を打ち出したため、英国の企業が実入りのいい契約から締め出される恐れに直面している。

EUの執行機関である欧州委員会は、契約企業がEU域外へ出た場合には違約金なしで契約を解除できる権利を求めている。さらに欧州委員会は、契約解除された会社は、EUが代わりの会社を見つけるのにかかった費用をすべて負担すべきだとも主張しているという。この条件への同意を求められている複数の企業が明らかにした。

ガリレオ計画はEUの資金拠出により欧州宇宙機関(ESA)が管理し、加盟国間の協働で進められている。英国がEU離脱後もガリレオ計画へのアクセスを維持するには、保安に関する新たな取り決めをEUと交渉しなければならない。

EU加盟中に事業からの排除も

契約解除条項が懸念を引き起こしているのは、英国がまだEU加盟国であるうちにガリレオ計画の事業から事実上排除されることになるからだ。契約の期間は数年だが、新たな条件の下で、2019年に見込まれる英国のEU離脱と同時に契約解除が可能になる。

この条項で「英国の企業は応札を考えることが非常に難しくなる」と、ある契約企業は言う。

この条項は、ガリレオ計画の最後の衛星8基に関する受注条件として提示された。入札は遅れているが、英国企業にとって4億ユーロ規模の契約になりうる。英国のジョンソン科学担当相は最近、ビエンコフスカ欧州委員(産業担当)に懸念を伝えている。

この条項を受けて英国からハイテク宇宙関連企業が流出する恐れがあり、世界全体で年間4000億ユーロ規模の宇宙関連市場の1割を握るとする英政府の目標達成も危うくなる。

2つの会社の幹部が、英国での活動をEU加盟国へ移転するか別のパートナーを選ぶかを検討していると語った。業界側は、ガリレオ関連の契約は25年までに最大で60億ユーロに達するとみている。

欧州委員会は、03年から「同様の」契約解除条項が標準になっており、新たな条項は「英国のEU離脱を見越して準備されたものではない」としている。だが、ある英政府高官は「英国が標的にされているように感じられる」と語る。

業界団体UKスペースの代表、リチャード・ペッカム氏はこう話す。「これまで英政府は、重要なEUの宇宙関連計画に残りたいという明確な意思はおろか願望すら示していない。EUが英企業の参加に関して慎重になるのも驚くにあたらない」